戒名とは
戒名(かいみょう) とは、 仏門に入り戒律を守ることを誓って授けられる名前のことです。
現代では人が亡くなった時に菩提寺の住職などから頂きます(順修戒名)が、 本来は生前に命名して頂くもの(生前戒名=逆修戒名)です。
宗派によっては、法名(浄土真宗)・法号(日蓮宗)ともいいます。
戒名に対して、生前使っていた名前のことを 俗名(ぞくみょう)とよびます。
では、戒律にはどのようなものがあるでしょうか。
五戒(ごかい)、八斎戒(はっさいかい)、十善戒(じゅうぜんかい)、菩薩戒(ぼさつかい)
などがそれです。
例えば、五戒とは次のような戒めです。
- 不殺生戒(ふせっしょうかい)・・・ 殺生をしてはいけない
- 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)・・・ 盗んではいけない
- 不邪淫戒(ふじゃいんかい)・・・ 異性とみだらな関係を持ってはいけない
- 不妄語戒(ふもうごかい)・・・ 嘘をついてはいけない
- 不飲酒戒(ふおんじゅかい)・・・ 酒を飲んではいけない
戒名の構成
戒名 は本来は二文字です。 それに院号・道号・位号などがついて全体を戒名というのが一般的になっています。
- 男性の例: □□院(院号) △△(道号) ○○(戒名) 居士(位号)
- 女性の例: □□院(院号) △△(道号) ○○(戒名) 大姉(位号)
■院号
院号 は本来、屋敷など住んでいた場所などを表しますが、 最近ではその人の仕事や性格などを表すことが多くなりました。
院号よりも上位のものとして院殿号がありますが、本来は院号に次ぐものでした。 いつのころからか、戒名の文字数が多ければ多いほどありがたがる風潮となり、 地位が逆転してしまいました。
そのほか院号に次ぐ称号として、庵号、斎号、軒号、房号などがあります。
■道号
道号 は号や字(あざな)や雅号などを用います。 現在では、名前、場所、職業、宗派、季節、性格、功績、趣味、特技などを表す字を使うことがあります。
■戒名
本来の意味の 戒名 です。俗名の一字を付けることが多いようです。 宗派既定の文字が入ることがあります。 場所、職業、季節、性格、功績などの文字を入れることもあります。
■位号
位号 は仏教徒としての階級的なものです。院号が付くと居士(大姉)が付くのが一般的です。
成人(15歳以上)の位号(男/女) | |
---|---|
信士/信女 | 一般的な信者 |
清信士/清信女 | 信士・信女の1つ上の位 |
禅定門/禅定尼 | 仏門に入った者 |
大禅定門/大禅定尼 | 禅定門・禅定尼の1つ上の位 |
居士/大姉 | 特に信仰心が篤い者 |
大居士/清大姉 | 居士・大姉の1つ上の位 |
子供の位号(男/女) | |
水子 | 流産や死産 |
嬰児/嬰女 | 0〜1歳 |
孩児/孩女 | 2〜3歳 |
童子/童女 | 4〜14歳 |
※子供の場合、一般的に院号、道号はつけない。 |
戒名のパターン
前項の戒名の構成は一般的なものですが、宗派によって戒名(法名/法号)のパターンは異なります。 以下にその例を掲げます。
宗派 | 戒名パターン例 |
---|---|
時宗 | □□院◇阿△△○○居士、 □□院◇弌△△○○大姉 |
浄土宗 | △△○○信士/信女、 ◇誉○○禅定門/禅定尼、 △△○○居士/大姉、 □□院△△○○居士/大姉、 □□院殿△△○○大居士/清大姉、 □□院殿△△○○大禅定門/大禅定尼、 □□院◇誉△△○○居士/大姉、 □□院◇空△△○○居士/大姉 |
浄土真宗 | 釈/釈尼○○、 □□院釈/釈尼○○ |
真言宗 | △△○○居士/大姉 |
曹洞宗 | △△○○禅定門/禅定尼、 △△○○信士/信女、 △△○○上座/尼上座、 □□院△△○○居士/大姉、 □□院殿△△○○大居士/清大姉 |
天台宗 | △△○○信士/信女、 △△○○禅定門/禅定尼、 □□院△△○○居士/大姉、 □□院殿△△○○大居士/清大姉、 □□院△△岳/室○○居士/大姉、 □□院△岳/室○○禅定門/禅定尼 |
日蓮宗 | △△○○信士/信女、 △△○○禅定門、 □□院△△○○居士/大姉、 □□院法◇日○居士、 □□院妙◇日○大姉、 □□院宗◇日○居士 |
律宗 | ○○菩薩、 ○○近住 |
臨済宗 | △△○○信士/信女、 △△○○上座/上姉、 △△○○居士/大姉、 □□院△△○○居士/大姉、 □□院殿△△○○大居士/清大姉、 △△○○禅定門/禅定尼、 △△○○大禅定門/大禅定尼 |
戒名の付け方
戒名を付けるには「三遷三除(さんせんさんじょ)」の心得というものがあります。 戒名の付け方に関する三つの励行と三つの禁忌(タブー)です。
三遷
- 熟語の善悪・・・意味や語感が良くなるような熟語にすること
- 語便の可否・・・読みやすくすること
- 年齢の応否・・・亡くなった時の年代がわかるようにすること
三除
- 奇怪の難字・・・通常使わないような文字を使わないこと
- 無詮の空字・・・何の意味かわからないような文字は使わないこと
- 不穏の異字・・・さしさわりのある発音にならないこと
これらは戒名の付け方の心得であり原則ですが、「絶対」ではないようです。
近年では、俗名の一字を盛り込む傾向があるようです。
また、宗派独自の規則や慣例のようなものもあるようです。
時宗の「阿」「弌」、浄土宗の「誉」、浄土真宗の「釈」、
真言宗の「真」、天台宗の「岳」「室」などです。
サイト管理人は曹洞宗です。 曹洞宗には特別な文字は無いようで、一般的な戒名の付け方をしているようです。
戒名の歴史
仏教 発祥の地、インドでは 戒名 は無かったようです。 仏教が中国に伝わった時に、戒名 が生まれたといわれています。
日本で最初の戒名は、 奈良時代の聖武天皇の戒名「勝満(しょうまん)」といわれていますが諸説あるようです。
戦国時代、武将たちは命を賭けて戦っており、いつ命を落すかもしれなかったので、 生前戒名を授かり普段から名乗っていたといわれています。 武田信玄の「信玄」、上杉謙信の「謙信」などがそれです。
その後、江戸時代に檀家制度が始まった時に民衆に広まったといわれています。
戒名の値段(戒名料の相場)
本来は「戒名料」ではなく「お布施」です。 お布施なので決まった値段、相場というものはありません。 お坊さんに聞くと、大概は「お気持ちで」と言われ、困ってしまいますが、 葬儀屋さんに聞くと、おおよその相場を教えてくれます。
中にはハッキリ値段が決まっているお寺さんもあるようです。
宗派、地域によっても大きく異なりますが、おおよそ以下のような金額といわれています。
位 | 金額 |
---|---|
信士/信女 | 20万円〜 |
居士/大姉 | 50万円〜 |
院居士/院大姉 | 80万円〜 |